映画『007 スカイフォール』

サム・メンデス監督。
最初に監督名を見たときに、目を疑った。サム・メンデスアメリカのファミリー映画で傑作を二つ(『アメリカン・ビューティー』『レボリューショナリー・ロード』)も撮っている監督だけに、この手のスパイ・アクション映画を撮るとは思っていなかったから。
結論から述べるならば、007シリーズの中では一番好きです。本作が。まずダニエル・クレイグの前2作は本当に面白くなかったし「これは007じゃない!」と思っていた。というのも、どうしても二つの許せない事柄があったから。前2作にはまずQが出てこない。Qの出てこない007なんてありえません。それに二作目のラストシーンでボンドがアメ車に乗っている。「ボンドよ、いつからお前はエテコウ魂を売り、アメコウに媚びるようになったんだ!」と勝手に激怒していた。まあ、これは半分冗談だけど、とにかくあまり面白くなかった。ただダニエル・クレイグのマスキュリンな肉体美にホレボレしていた。
しかし、本作は違う。Qも出てくるし、アストン・マーチンも出てくる。それに何よりも敵役のハピエル・バルデムが良い。『ノーカントリー』の時とは対照的に様々な顔の表現を用いることで、復讐に燃え上がる狂気の男を見事に体現している(ピアース・ブロスナンの『007 ゴールデンアイ』のショーン・ビーンと似たような設定だけど、本作のほうが断然良いすっよ)。これぞ敵=適役である。レイフ・ファインズも良かったし、若きQも良かったし、ボンドの銃がワルサーPPKに戻っていたのも良かった。
ただし、多少長いと思う。もう少し時間を短縮して、120分ぐらいに収められたら最高だったと思う。それと本作を見て改めて気付かされたことは、アクション映画において、「冒頭シーン」の構築がいかに重要であるかということ。本作では、冒頭シーン、確かにボンドはめちゃくちゃかっこいい(あのクレーンから乗客車両に飛び移るシーン!)のだが、やはり多少の長さ=冗長さを僕は感じてしまった。ここでいかに圧縮し、不必要な要素を削ぎ落とせるのかが、映画そのもののリズムの鍵であるように思う。恐らく、本作でもかなり意識されているであろう、『ダークナイト』はこの点においてもやはり完璧な圧縮でやはり偉大な作品だよ。

若干のネタバレやけども、世代交代が謳われる本作。これからも楽しみ。その前に俺はショーン・コネリー時代の見ていないいくつかの作品を見ておかないと。