映画『終の信託』


時勢にあった映画であり、前作『それでもボクは、やってない』と同様にかなり緻密な取材が為されているのであろうか、医療にかかわることはなかなか細かいところまで描かれており、見ていても勉強になる。
それに、本作が良いところは、尊厳死の是非を巡って、どちらかの立場に一方的に物語が寄与していないという点だ*1。本作では、尊厳死を尊重すべきか/尊重すべきでないか、という「問い」とその作り手の解=「メッセージ」は放擲される。問いとメッセージが投げ出されたまま、あとはそれを観る者が自分なりの解を見つけろというスタイルが良い。

ともっと色々と書いていたが、なぜか消えてしまったので、もう止めよう。時間あれば、本作の役所広司の素晴らしさについてまた書く。

*1:キャラクターの設定上、多少、尊厳死尊重に比重があるような気はするが、しかし、それは大したことではない。周防監督による前作からのテーマである国家権力(=検察)における物語化の事実歪曲は今回も描かれるが、そうであったとしても、尊厳死反対の立場である検察の言明に対して真っ向から反感を抱くこと難しいという非常にうまい設定のされ方である

映画『危険なメソッド』


とにかく最初のキーナ・ナイトレイのヒステリーの症状がとてもとても見物。それに今や女性型のセックス・シンボル(?)マイケル・ファスベンダーユングだろうか。ヴィゴ・モーテンセンの渋いフロイトもボクは好きだが笑。それにしても、今年はマイケル・ファスベンダーは性に関する映画でお見かけする。3月頃に見た『シェイム』もセックス依存症とトラウマの話であり、恐らく精神分析的には面白い話なんだろうな(って、精神分析は未だに全く理解できていないので、わからんが)。
精神分析とかユング心理学がどれだけ正確に描かれているのかはわからないけれども、フロイトの蒐集癖やユングアーリア人フロイトユダヤ人のことなども少し触れられていて、興味深かった。精神分析のことがわかっていると、もっとより深く楽しめるようになっているのかしら・・・。精神分析における、分析者と患者の関係性が焦点になっているのかしら。精神分析屋さんの批評を待とう。